今回は、「黒ビール」のスタイルの違いについて書いていきたいと思います。
このブログでは、飲んだビールの紹介記事を中心に投稿していますが、特に黒ビールと一口に言っても、いろんなスタイルがあります。
黒ビールとして知られている代表的なスタイルには、「シュバルツ」、「ポーター」、「スタウト」、「デュンケル」などがあります。
黒ビールのスタイルの違いや、そもそもなぜ黒ビールは黒いのか?について、飲んだビールの例も出しつつまとめていきたいと思います。
contents
「黒ビール」はなぜ黒いのか?
次の章で黒ビールの種類について書きますが、まずそもそも黒ビールとはどんなビールなのかについて書いていきます。
まず、「黒ビール」というだけあって、色が黒いのが特徴です。なぜ黒くなるのかというと、主に使用する水や麦芽など、のビールの原料が影響しています。
色合いに影響する原材料①「水」
まず水についてですが、一般的に、濃色ビールには硬水、淡色ビールには軟水が向いていると言われています。日本ビール検定の公式テキストにて、「硬水の特徴」が専門的に語られています。
つまり硬水はメイラード反応が促進され、濃色ビールになりやすいようです。ビール造りは化学ですね。。
色合いに影響する原材料②「麦芽」
次に麦芽についてですが、ビールの色は使用する麦芽に特に大きく影響されます。麦芽はローストされることにより、濃色麦芽となり、これらの割合によって、ビールの色合いが決まってきます。
濃色の麦芽には、カラメル麦芽、チョコレート麦芽、などなどがあります。黒ビールに共通しているほろ苦さや甘み、香ばしさといった味わいは、これらのローストされた濃色麦芽から来ています。
「黒ビール」の種類
黒ビールは、このブログでも何度も紹介しています。
「黒ビール」の一覧
上にも書いた通り、黒ビールとして知られている代表的なスタイルは、「シュバルツ」、「デュンケル」、「ポーター」、「スタウト」などがあります。
それぞれ発祥の地も異なっており、
- シュバルツは「ドイツ・バイエルン地方」発祥のスタイル
- デュンケルは「ドイツ・バイエルン地方」発祥のスタイル
- ポーターは「イギリス・ロンドン」発祥のスタイル
- スタウトは「アイルランド」発祥のスタイル
です。
そして、これら3つのスタイルは発酵方法で分類できます。
- シュバルツ&デュンケルは「下面発酵」
- ポーター&スタウトは「上面発酵」
です。
ここまでの分類を以下の表にまとめました。
スタイル | 発祥の国 | 発酵方法 |
---|---|---|
シュバルツ | ドイツ | 下面発酵 |
デュンケル | ドイツ | 下面発酵 |
ポーター | イギリス | 上面発酵 |
スタウト | アイルランド | 上面発酵 |
ここからはそれぞれのスタイルの特徴について書いていきます。
【その1】シュバルツ
シュバルツはドイツ発祥で下面発酵の黒ビールです。シュバルツとは、ドイツ語で「黒」という意味だそうです。
有名なシュバルツスタイルのビールに、「ケストリッツァー シュバルツ」があります。
このビールは、あの文豪ゲーテが愛したビールとしても有名です。
また、日本の大手ビールメーカーが出している黒ビールは、基本的にシュバルツです。
味の特徴としては、ロースト麦芽の甘み、香ばしさを感じます。
また、下面発酵酵母によって発酵されており、ポーターやスタウトに比べて副産物が少なくスッキリとした味わいです。
総じて、他の黒ビールと比較しての特徴は、ロースト麦芽の深み・コクを感じられつつ、唯一の下面発酵でありスッキリとした後味のビールと言えるでしょう。
□シュバルツの例:
「シュバルツ」の一覧
【その2】デュンケル
続いてはデュンケルについて紹介します。デュンケルもシュバルツと同じく、ドイツのバイエルン地方発祥の下面発酵ビールです。「デュンケル」とはドイツ語で「暗い」を意味します。シュバルツよりも、やや明るめな色合いなのがデュンケルです。
デュンケルという場合には、黒ビールというよりもダークビールと呼ぶ方がしっくりくるかもしれませんね。
デュンケルはダークモルトを使用することでチョコレートやキャラメルといった甘い香り・味わいのビールになります。口当たりもマイルドなものが多くとても飲みやすいです。黒ビールというと、苦味が強いイメージがありますが、これはどちらかというと甘みが強いビールです。
□デュンケルの例:
https://pivoblog.com/tag/dunkles
【その3】ポーター
続いて、イギリス・ロンドン発祥の上面発酵黒ビール、ポーターについて紹介します。
「ポーター」とは、イギリスのロンドンで生まれた黒ビールです。
18世紀の初め、イギリスでは、3種類のビールを混ぜて飲む飲み方が流行していました。
そこで、ロンドンのベル醸造所の経営者「ラルフ・ハーウッド」が、あらかじめ3種類をブレンドして商品化したのが、ポーターの始まりと言われています。
「ポーター」の名前の由来は諸説あるようですが、一説によると、エールハウスに樽を運んできた運搬人が、「運んできたよ!(ポーター!)」と叫んだのが、ポーターの名称の由来だと言われています。
ポーターの特徴ですが、シュバルツ同様、焦がした麦芽の甘みや苦味を感じるビールです。シュバルツと違うところは、エール酵母の特徴により、副原料由来の特徴的な香味を感じることのできるところでしょうか。
□ポーターの例:
「ポーター」の一覧
【その4】スタウト
続いてスタウトの紹介です。
スタウトとはアイルランド発祥のビールで、ギネス社が開発しました。ギネスとはあのギネス記録でお馴染みのギネスです。ポーターに対抗するために生まれた黒ビールです。
ポーターもそうですが、その歴史は古く、ギネスを代表するスタウトである「ギネスエクストラスタウト」が発売されたのが1759年です。日本はその頃、杉田玄白が解体新書をリリースした頃です。それよりも前です。
詳しくは、以下の記事にも書いていますが、同じ上面発酵黒ビールのポーターとの違いは、「ブラウン麦芽」の代わりに「ペール麦芽」(淡色麦芽)を使用し、色つけには焦がした大麦を使っているところです。
特にお店でギネスのドラフトを飲むと、こんな感じでものすごくきめ細かい泡で飲むことができます。
□スタウトの例:
味の最大の特徴は、何と言ってもコーヒーのような香ばしさのある強烈な苦味です。そしてギネスの「ドライスタウト」に代表されるように、比較的ドライな印象のビールです。麦芽の代わりに一部大麦を使用することにより、ドライでスッキリとした味わいになります。
「スタウト」の一覧
ギネススタウト:
https://www.guinness.com/ja-jp/私たちのビール/ギネス-extra-stout/
【番外編】ミュンヒナー
古典的なミュンヘンのラガービールで「ミュンヒナー」というスタイルがあります。黒ビールです。
このスタイルは、ホップの苦味より麦芽の甘み、旨味を強く感じるのが特徴で、コクのある黒ビールです。実は僕個人的には、この「ミュンヒナー」スタイルの黒ビールが一番好きです。
僕が初めてミュンヒナーを飲んだのは、日本ではなく、チェコ・プラハです。
まずは、プラハの「ウ・フレクー」です。
ウ・フレクーは、1499年創業の、チェコの老舗中の老舗ピヴォバー(ビアバー)です。歴史あるこのお店では、伝統的にミュンヒナースタイルの黒ビールが造られています。
続いて、チェコで人気の黒ビール「コゼル」です。
プラハでは「ピルスナー・ウルケル」がとても有名でよく飲まれていますが、負けず劣らずこの「コゼル」もよく飲まれています。チェコのベストダークビールにも選ばれたことのあり、チェコで愛される黒ビールです。
こちらについても、よろしければ記事をご覧ください。
この章の最初にも言いましたが、ミュンヒナーの特徴は苦味が弱めで甘みが強く、とても飲みやすいのでガンガン飲めてしまう黒ビールです。
ミュンヒナーは、日本でも大手メーカーが発売していたことがあります。2015年に「欧州四大セレクション ミュンヒナーデュンケル」と題してサッポロから発売されていました。その当時、僕は今ほどビール熱が高くなかったため、飲みませんでした。本当に悔やまれます。というか、もう一度発売してほしいです。
ちなみにここからは余談ですが、この「欧州四大セレクション」は、他にも「ウィンナー」というスタイルのビールも発売していました。
ウィンナーはオーストリアのウィーン発祥のビールで、ウィンナービール自体は現在ではほぼ造られていません。しかしながら、「メルツェン」というオクトーバーフェストで飲まれるビールの元になったビールと言われていて、いつか飲んでみたいビールの一つです。
個人的にはサッポロの「欧州四大セレクション」はものすごくハイセンスな選出です。エビスという最強のブランドもつくっていて、やっぱりサッポロは素晴らしいビール会社だと改めて思いました。
また、日本のクラフトビール界にもミュンヒナーはあるようです。石川酒造の「多摩の恵 ミュンヒナーダーク」というビールがあります。これはとても興味があるのでぜひ飲んでみたいと思っています。
※追記:
山形県に「ミュンヒナー」スタイルの黒ビールを造っているクラフトブルワリー「月山」がありました。甘みが強くて美味しかったです。
また、2021年に発売された、アサヒ生ビールの黒生もミュンヘンスタイルの黒ビールです。パッケージにしっかりと、「濃色ミュンヘンビールの流れを汲む黒ビール」と書かれています。
「ミュンヒナー」の一覧
まとめ
最後に、改めて各黒ビールについてまとめたいと思います。
スタイル | 発祥の国 | 発酵方法 | 味の特徴 |
---|---|---|---|
シュバルツ | ドイツ | 下面発酵 | 麦芽の甘みと苦味、後味すっきり |
デュンケル | ドイツ | 下面発酵 | チョコレート・キャラメルの様な甘み |
ポーター | イギリス | 上面発酵 | 麦芽の甘みと苦味、芳醇なエステル香 |
スタウト | アイルランド | 上面発酵 | 焦がした苦味、ドライな味わい |
ミュンヒナー | ドイツ | 下面発酵 | 苦味控えめ、旨味・甘み強め |
長くなってしまいましたが、以上で黒ビールの紹介を終わりたいと思います。
一口に黒ビールといっても、いろんな種類があり、それぞれ歴史も違えば醸造方法も、もちろん味も違います。この記事を書いていて、ビールは奥が深いと改めて思わされました。やはり知ることによってよりビールを楽しむことができるようになります。それを今回は体感しました。
僕は黒ビールの芳醇で香ばしい味が大好きで、たまに無性に飲みたくなります。これからも美味しい黒ビールを求めて、見つかったら随時ブログを更新して行きたいと思います。
今回は以上です。
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